アニメ「エイトマン」の主題歌や、「さすらい」などで知られる歌手克美しげるさん(本名・津村誠也=つむら・せいや)が、脳出血のため2月27日に群馬県内で亡くなっていたことが1日、分かった。75歳だった。克美さんは76年に愛人女性を殺害して懲役10年、89年にも覚せい剤取締法違反罪で懲役8月の実刑判決を受けた。その後、芸能界から追放された状態のまま、静かにこの世を去っていた。

 現役歌手にして殺人の加害者-日本芸能史上、前代未聞の事件を起こした克美さんが、ひっそりと亡くなっていた。近い関係者によると、32歳年下の妻と1995年(平7)に再々婚後は群馬県内で生活していたが、脳梗塞による言語障害と顔面まひ、大動脈瘤(りゅう)解離などで苦しんでいた。昨年「車いすでも何でも歌う」と意欲を見せたが、今年2月27日に妻にみとられて亡くなった。

 克美さんは、8月に自殺した藤圭子さん(享年62)もカバーした「さすらい」をヒットさせ、64、65年に2年連続でNHK紅白歌合戦に出演後、低迷。妻と長女がいながら銀座のクラブホステスと愛人関係を続けた。75年に新曲「おもいやり」で再起を図るが、翌76年5月6日、結婚を迫る愛人から妻に2人の関係をばらすと言われ逆上して絞殺。遺体を車のトランクに入れたまま羽田空港からキャンペーン先の北海道旭川市に飛んだが、同8日には遺体が見つかり逮捕。懲役10年の判決を受けて、楽曲は店頭から回収された。

 2年減刑されて出所後はカラオケ教室を開いて成功も、再婚した妻とは離婚。毎年5月に殺人事件を思い出し、気がめいって覚せい剤に手を出して89年に再び逮捕。出所後、過去を振り返る番組の出演はあったが、歌番組は、03年1月3日放送のTBS系「超豪華!

 あの人は今!

 新春紅白!

 夢の歌合戦」が最後となった。

 07年に親交の深いライターの石橋春海氏が、著書「蘇る封印歌謡

 いったい歌は誰のものなのか」の付録として克美さんのヒット曲のCD化に動くも、元所属のEMIレコードから楽曲の使用を認められなかったという。08年12月には群馬県館林市でコンサートを行ったが、これが最後の公の場となった。

 克美さんはアニメ主題歌の「エイトマン」が代表曲扱いされることに抵抗を感じていたが、後年、同曲が人々に愛されていると知り「自分と『エイトマン』は一体」と再認識したという。石橋氏は「社会的制裁は受けた。歌が闇に葬られるのはたまらない」と克美さんの歌のCD化を訴えた。

出典 日刊スポーツ 2013年10月2日9時36分 

   題名 『紅白 殺人 克美茂さん死んでいた』