十津川警部 北陸を走る
西村京太郎著作。
1枚の写真が引き起こした連続殺人事件。
なぜ普通の何気ない写真が、連続殺人事件を引き起こしたのか。
とある人物からすると大量殺人をしてまでも、消し去りたい代物だった。
ある過去の犯罪の真相を闇に葬るために。
匿名の手紙を投稿した主は、犯人を本当はかばいたいのに、ちゃんと告発を行った誠実な人間だった。それでもつらかったろうな。十津川警部の信用を最後まで裏切らなかった。
それに比べてゆすりをやったあの女は。
2年前の看護婦殺しで浮上した容疑者の3人。
若手代議士、有名な俳優、若い元プロ野球選手。
最終的に、その中の二人が自殺する。残る男は、とある遺書に犯罪の暴露をされている。
事件の黒幕が誰なのか。殺された女の自宅で見つかったトリック写真から、犯人はこいつだと思っていて、もう片方の容疑者が自殺に見せかけて殺されたので、もう間違いないと思っていたのに、巧妙なミスリードに引っ掛かり、最後まで騙されてしまった。十津川が言うように2引く1といった単純なものではなく、かなり複雑だった。
終盤、十津川が今回の犯人は幽霊かもしれないという発言。
十津川が犯人だと考えているあの人物は、すでに亡くなっているから犯行は不可能。生身の人間ではない死者に人は殺せない。しかし…。
そのことを踏まえて、十津川が最終的に導き出した真犯人は、意外過ぎて盲点をつくような人物だった。
この辺りは獄門島を連想させるものだった。
今回の事件は、ある男の死者に対する愛情がもたらした犯罪だった。
作中で異常とも表現されている。
前回感想に書いた、萩津和野に消えた女も、ある死者を異常で間違った愛し方をして、連続殺人を引き起こした男が登場する。