青空文庫で、坂口安吾の堕落論を読んだ。
敗戦後、人々は堕落していた。特攻隊員だった人が闇屋を始めて、戦争未亡人だった人が売春をしている。
戦時中では美しいとされる存在だったのが、卑しい存在に。
だが、安吾はその堕落は決して間違ってはいないと主張している。彼らはそうしないと生きていけない。人間らしく、自分の欲に正直に生きているのだ。
そもそも戦時中に美徳とされてきたものは、すべて時の権力者にとって都合のいい価値観の押し付けにすぎなかったからだ。
庶民をうまく従わせるために。
今の時代を生きていくうえで、決められた美徳や価値観にがんじがらめになっている者は死ぬしかない。正しい堕落をするものが生き残ることができる。
正しい堕落とは。
他者に決められた常識や価値観に縛られず、自分の考えや価値観に素直に従い、周囲から堕落しているとか落伍者とか思われていても、自分がどうしたら幸福になれるかを考えて模索していくことだ。
無頼派とも評されている。作家の太宰治、織田作之助、そして安吾などが属している。
具体的には、
特攻隊員になったが若く死ぬのは嫌だ。だが...。
運よく生きながらえて、闇屋を始めて結婚して幸せな家庭を築けた。
戦争で夫を失って数か月。あの人の存在が気になるしかし....。
敗戦後、世間からバッシングされながらも再婚を果たす。
など。
他人からの100個のいいねよりも、自分の1個のいいねの方が大事でしょうと主張している大原篇理氏と同じ考え方だ。