にほんブログ村１９７９年公開。
本作の主人公である吉岡まさるは、住み込みで新聞配達員として働いている１９歳の予備校生である。
配達地域の地図をノートに書いていて、気に食わない住民の家にバツ印を書いたり、いたずら電話をかけるなど、鬱屈とした生活を送っていた。
彼は同じ部屋で紺野という、３０すぎのうだつの上がらない男と同居していた。周囲から二人はかなり親しいと思われていて、ホモカップルという噂まで出るほど。
吉岡は今野からよくかさぶたのマリア様だと思っている女性の話を聞かされていた。実際にその女性が住んでいるアパートの部屋にまで連れて行ってもらったことも。
吉岡と紺野、そしてマリアが本作の主要な人物たち。
その他、紺野と同様うだつの上がらない新聞屋の店主やその夫に冷たくしていて、しょっちゅう激しい夫婦喧嘩をしている奥さん、吉岡の職場仲間で試合で対戦相手にボコボコにやられてKO負けしたプロボクサー志望の少年、同じく職場仲間で紺野にお金を貸したが返してくれないので彼をぶっ飛ばした少年などが登場する。
全員が何らかの闇を抱えていた。いや心に闇を抱えていない人なんているのか。多かれ少なかれみんな何かの悩みを抱えて生きている。
そんなある日、紺野が強盗を働いて警察に逮捕されてしまう。紺野が強盗を語らいた原因はマリアにあると吉岡は考えて、彼女のアパートに向かうのだが...。
主人公の目は終始死んでいて暗い。心に闇を抱えているのが一目瞭然だ。なんだか時計仕掛けのオレンジのDVDのパッケージの表紙に描かれている主人公の青年のどす黒い表情をしたイラストを思い出した。よく似ているな。
足の不自由なマリア。アパートの階段ですらまともに上がれず、何度も転んでしまうシーンをみて可哀そうだなと思ったが、同時にもどかしさも覚えた。男たちに頼らなければ生きていけない彼女と、いたずら電話をかけることでしか自分の鬱憤を晴らすことができない吉岡は全く似た存在であった。
誰かに依存して迷惑をかけないと生きていけない者たち。
なのでマリアを散々責め立てた吉岡は、ラストシーンでそのことを感じ自分の不甲斐なさにただ泣くことしかできなかったのだ。
